今回のお酒の会はこれまでとはちょっと趣向を変えて、お客様が普段ご愛飲されているお酒をご紹介していただき、みなさまにも味わっていただく機会を設けました。
お客様それぞれに、特にお気に入りの銘柄があると思いますが、「他の方はどんなお酒が好きなのかな?」とちょっと気になったりもしますよね。お互いのお酒の好みを知ることで、よりコミュニケーションが深まったり、違う銘柄のお酒も飲んでみようかという気持ちになるのではないでしょうか。
2015年、新たな年の幕が開けました。おかげさまで記念すべき20回目となる「お酒を楽しむ会」は、久しぶりに中村酒店を飛び出し、取手駅西口のart space/bar "confilictable cube(コンフリ)"さまを会場に、マスター手作りの美味しいお料理とお客様イチオシのお酒をお楽しみいただく会を企画いたしました。
今回のお酒の会はこれまでとはちょっと趣向を変えて、お客様が普段ご愛飲されているお酒をご紹介していただき、みなさまにも味わっていただく機会を設けました。
お客様それぞれに、特にお気に入りの銘柄があると思いますが、「他の方はどんなお酒が好きなのかな?」とちょっと気になったりもしますよね。お互いのお酒の好みを知ることで、よりコミュニケーションが深まったり、違う銘柄のお酒も飲んでみようかという気持ちになるのではないでしょうか。
今回は初めての試みということで、7名のお客様にお店からプレゼンテーションをお願いしました。ご紹介いただいたお酒は以下の7本です。
中村酒店からは、以下の2本を本日のイチオシとして出品しました。
次項からは、それぞれのお酒についてのプレゼンテーションをお届けします。
中村酒店、以降は中:トップバッターは、食中向きの穏やかなお酒がお好きなS様(40代男性)。お酒の説明をいつも熱心に聞いて下さり、いろいろな銘柄にチャレンジされて、お好みの味わいの幅をどんどん広げていらしゃいます。今日はふるさと神奈川の「相模灘」について、お話をお聞かせ願います。
中:このお酒が特にお気に召した理由を教えてください。
S:僕好みの濃い旨味があるのに、後口がスッキリでキラキラした透明感が感じられるキレイなお酒だから。あと、中村酒店さんで初めて買ったお酒だから思い入れもあります。
中:このお酒を普段どのように楽しんでいらっしゃいますか?
S:冷で楽しんでいます。趣味でお猪口を集めているので、その日の気分にあったお猪口を選ぶ楽しみがあります。相模灘だと、印象から青系のものが多くなりますね。
中:このお酒と合うお料理や食べ物がありましたら教えてください。
S:やっぱり海の幸が良く合います。この時期なら牡蠣。家だと怖くて生では食べないので、ホイル焼きなどで楽しんでいます。一口含むと牡蠣の旨味が増幅して、日本酒のありがたみを実感できます。
中:酒器にもこだわり、今日もマイ利き猪口をお持ち下さいました。透明感のある味わいが身上の「相模灘」の個性をしっかり受け止めて、酒器やお料理との相性を考えながらお楽しみになっていらっしゃいます。他にお好みの銘柄は、「瀧自慢」「明鏡止水」「正雪」など優れた食中酒をセレクトされています。
中:続いて2番めのプレゼンターはT様(40代男性)、最近少し好みのお酒の傾向が変わってきたとおっしゃいます。飲みはじめの頃は、濃醇なタイプが良いと思っていらしたそうですが、最近は食に寄り添ってくれるお酒がお好みとか。今日ご紹介いただくのは、まさに食を引き立てる名脇役「天寶一」です。普段からご夫婦で日本酒をお楽しみになっているそうです。
中:このお酒が特にお気に召した理由を教えてください。
T:蔵元の言葉である「日本酒は和食を最大限に生かす名脇役」というコンセプトがピッタリのお酒だと感じているからです。華やかさはないけれど、食事と一緒に飲みながら、食も酒も自然と進むお酒です。また、造り手自ら名脇役と言い切っているところも、すごいなと感じ入ります。
中:このお酒を普段どのように楽しんでいらっしゃいますか?
T:冷酒で食中酒として楽しんでいます。酒器は手作りの焼き物、切子のグラス、大正・昭和初期のアンティークのグラスなど、その時々に合わせて使っています。最近は笠間焼きの作家さんが作った酒器を良く使っています。アンティークのグラスは、天寶一の持つ日本酒本来の美味しさの歴史と相まって、グッドコンビですね。
中:このお酒と合うお料理や食べ物がありましたら教えてください。
T:和食の料理は全般的に合うと思います。特に刺身や煮物との相性が良いと感じています。
中:ご出身が九州ということで、西日本のお酒が特にお口に合うそうです。他のお好みの銘柄も「美丈夫」「南」「美田」といずれも九州・四国のもの。生まれ育った土地の食べ物が味覚を育てるということを教えていただきました。なかでも「天寶一」は食中酒を強く意識した造りのお酒で、程よい旨味とキレの良さはお好みにジャストフィットしていることがとても良く伝わってきましたね。
また酒器もいろいろな種類をお持ちとのことで、お酒の味わいをより活かす面白さを語っていただき、ありがとうございました。
中:3番めはこの方、中村酒店お酒を楽しむ会、全20回皆勤賞を誇るH様(40代男性)。お料理の腕前は玄人はだし、お酒への造詣も大変深くていらっしゃいます。お酒を愛してやまないH様の最近のお気に入りは、当店のニューフェイス、福岡の「若波」だそうです。
中:このお酒が特にお気に召した理由を教えてください。
H:冷にして酸と香りが穏やかに立ち、後口(舌触り)が雑味(辛・苦)を感じさせないところが気に入っています。
中:このお酒を普段どのように楽しんでいらっしゃいますか?
H:もっぱら冷(~10℃)で、日本酒グラスで香りと共に楽しんでいます。香りを留めるタイプの酒器だと、より一層このお酒の特徴を楽しむことができますね。また最近は燗も試行中です。
中:このお酒と合うお料理や食べ物がありましたら教えてください。
H:自炊していろいろ試してみました。肉は和牛のランプのしゃぶしゃぶ、魚では真鯛の煎り酒漬けなど。他にも、甘海老の塩辛や聖護院大根と鶏そぼろを炊いたものなども良かったです。熱燗なら、スモークチキンや焼豆腐なんかも合うのではと思っています。
中:さすがはお酒を楽しむ会皆勤賞の実績、好きなお酒のことを知り尽くしておられます。ここまでお酒のことを深くご理解いただければ、造り手や売り手も本望というものですね。また様々な温度帯での味わいやお料理との相性などあくなき探究心を発揮されており、お酒を楽しむというよりももはや研究家の域に。 「若波」は姉弟を中心に若い蔵人が一丸となって醸す誕生間もないブランドですが、洗練味のある酸と旨味が映える若き造り手の丁寧な手仕事ぶりが感じられるお酒です。他に「奥能登の白菊」や「南」などもお好きだそうです。小さな蔵が丁寧に醸すお酒に、常に注目をされていらっしゃる様子が伝わりました。
中:4番目のプレゼンターは当店の宣伝部長、Y様(40代男性)。いろいろな銘柄を楽しまれる日本酒愛飲家であり、SNSでの情報発信にも積極的でいらっしゃいます。的確な味わい表現にはいつも脱帽、そしてお料理もプロ並みのレパートリーをお持ちで、お酒を楽しむ達人です。今日は数ある銘柄の中でも、特にお気に入りの「ゆきの美人」をみなさまお楽しみいただきたいそうですよ。
中:このお酒が特にお気に召した理由を教えてください。
Y:ゆきの美人は絶妙な酸味の加減が命。ほどよい甘さとジューシーに広がるこの酸味の前面に出た加減の絶妙さがいい。酸味のあるお酒はいろいろあるけど、このバランス感をこえるお酒は今のところまだ知りません。
反面、少しでも洗練されすぎるとこれがくずれちゃうのですが、でもこの絶妙さも含めてが、この美人さんの魅力です。
とにかくこの酸味のバランスが命なので、割と当たり外れは個人的に大きいと思う。とくに酒米によって顕著で、いつもの酒こまちをベースにすると山田錦と愛山は相性バツグン。雄町や吟の精は個人的にはそのバランスを欠いた感があるんです。
ということで、保守的に作っていくタイプかと思うと実は結構チャレンジャブル。でもそこもまたこのお酒のかわいいところ。田舎モンでスッピン美人なのに、ちょっと冒険の化粧が失敗しちゃう根はいい子って感じです(笑)
中:このお酒を普段どのように楽しんでいらっしゃいますか?
Y:基本は常温。燗をつけても美味しいけど、個人的には酸味とジューシーさの絶妙さが命なので、極力それをくずしたくない。とにかく、飾らないそのままの君が一番だよ酒、なのです(笑)
中:このお酒と合うお料理や食べ物がありましたら教えてください。
Y:和洋はもちろん、意外と中華も、割と何でも合います。でもこのバランスを崩す味付けはいずれもダメ。例えば甘いものはダメでただすっぱいお酒で味気がなくなる。あと極端に塩辛いものもダメですね。魚なら、どちらかというと脂がのっている方が合います。
反面、炒め物や揚げ物は全然OKで、酸味がしっかり受けとめてくれます。
ちなみに音楽だと素朴さとバランスが妙味のカナダのRockバンド、Triumphをおすすめします。
中:お酒を擬人化してのお話は、とてもわかりやすくて面白いですね。そしてお酒への愛情が伝わってまいりました。特に「ゆきの美人」に関してはほぼ全種類をお飲みになっており、鋭いご指摘などファンならではのご高察に圧倒されてしまいました。
イキの良い酸が魅力的なお酒「ゆきの美人」をこれからもご愛飲頂きたいと思います。
中:5番目は、最年少プレゼンター、まだ20代の大学生N様(20代男性)にお願いいたしましょう。いつもご両親と一緒にご家族揃ってお酒を楽しむ会にお越しいただいております。日本酒好きのご両親の英才教育を受けられて、成人と同時に日本酒デビューを果たされた期待のサラブレッド。今回唯一の20代の若いお客様は、普段どのように日本酒を楽しんでくださっているのか、興味津々ですね。
今日プレゼンしていただくのは、今や人気沸騰の東京の地酒「屋守」です。
中:このお酒が特にお気に召した理由を教えてください。
N:すっきりとしていて飲みやすく、甘い香りが好みです。また、成人&大学合格の時に飲んだ思い出のお酒でもあります。
中:このお酒を普段どのように楽しんでいらっしゃいますか?
N:冷酒で楽しんでいます。普段は家族3人で飲むことが多いので、会話が一番の楽しみですね。
中:このお酒と合うお料理や食べ物がありましたら教えてください。
N:あまり味の濃くない刺身なんかは良く合うと思います。実は、普段はお酒単体で飲んでいるので、あまり思いつきません(笑)
中:一家揃って日本酒をお楽しみいただいているとのことで、仲の良いご家族の情景が目に浮かびます。お酒は大切なコミニュケーションツールになっているのですね。
はじめから美味しいお酒をお飲みいただける環境が整っていたことが日本酒が好きになるきっかけとなり、ご家族共通の話題が増えたことはとても素敵なこと。
ジューシーな味わいの「屋守」は、初めて日本酒を嗜む方にもうってつけのお酒です。これからもいろいろな日本酒をお楽しみいただきたいと思います。
中:つづいて6番目には日本酒のみならずワインなど様々なお酒を嗜まれる酒通、M様(60代男性)。造り手の個性が表れた豊潤な味わいのお酒が特にお好みだそうです。今日は「鳳凰美田」について、お話をお聞かせいただきましょう。
中:このお酒が特にお気に召した理由を教えてください。
M:フランスのワイン酵母を使って仕込んでいる「ワイン日本酒」という革新的な点が興味深いですね。鳳凰美田の中ではフルーティーな吟醸香は少し抑えられていますが、爽やかな酸味と果物の様な熟した甘味が特徴的です。
中:このお酒を普段どのように楽しんでいらっしゃいますか?
M:冷酒に限りますね。白ワインと同様に、冷やして飲むのが一番でしょう。いつも日本酒は一合利き猪口で飲んでいますが、このお酒だとやはりワイングラスが似合いますね。
中:このお酒と合うお料理や食べ物がありましたら教えてください。
M:魚のソテーや鍋など、酸味や香りを損なわないものと良く合うのではと思います。このプレゼンをするにあたり、ワインと同じようにチーズとの相性も試してみたところ、これもなかなかよい組み合わせでした。
中:ご紹介いただいた「鳳凰美田・Wine Cell」は、まさに個性的なお酒の代表格、ワイン酵母を用いてまた違った日本酒の世界を切り開いたお酒です。プレゼンにあたっては、このお酒の持ち味を理解して臨むため、事前にお飲みになって相性の良い食べ物などを研究なさったそうです。
また、ジョークを交えながらのウィットに富んだ軽妙なお話ぶりがご参加のお客様の笑いを誘い、大きく盛り上げてくださいました。
中:最後を飾る7番目のプレゼンターはO様(30代男性)です。最近お飲みになった「来福・Mellow」の妖艶な魅力にすっかりハマってしまったそうです。今日はこの酒について熱く語っていただきましょう。
中:このお酒が特にお気に召した理由を教えてください。
O:芳醇な香りがポイントです。一口飲んで目を閉じると、お花畑にいるような華やかさがあるところです。
中:このお酒を普段どのように楽しんでいらっしゃいますか?
O:冷酒にして楽しんでいます。酒器はワイングラスでも良いと思いますし、切子のグラスやお気に入りの片口などでも楽しんでいます。
中:このお酒と合うお料理や食べ物がありましたら教えてください。
O:貴腐ワインのような雰囲気から、チーズにも合います。また、生臭さがある刺身や塩辛などの料理と一緒に飲むとさっぱりと臭みを洗い流してくれるあたりは、やはり日本酒なんだなと感じるところです。
中:濃密な甘さが特長の貴醸酒ということで、食前または食後酒というスタンスから最終プレゼンターをお願いいたしましたが、来福流貴醸酒の特性をしっかりご理解くださり、果敢にも食中酒としての可能性を探求していただきました。
プレゼン終了後もこのお酒をお持ちになって、ご来場のお客様におすすめくださいました。O様のお酒に対する思いが、他のお客様にも充分伝わったのではないでしょうか。
初めてのプレゼンスタイルのお酒を楽しむ会は、おかげさまで大変ご好評いただきました。これまでのテーマを絞った当店からの提案型スタイルではなく、お客様の視点からみたお酒に対する思いをお聞かせいただけたことは、とても新鮮でありまた貴重な機会であったと思います。
また、ご参加のお客様からも、「他の方のお酒の好みや思い入れ、お酒に合う料理などを聞くことが出来て、とても興味深かった」、「飲んだことのないお酒に対する新たな発見があり、飲んだことのある銘柄も他の方の意見が聞けて参考になり面白い」などたくさんの貴重なご意見を頂戴し、新しいタイプの酒の会をお楽しみいただけたことは、大変ありがたく当店にとって何よりの収穫になりました。
「プレゼンター役を引き受けても良い」、「また参加したい」という嬉しいご意見もたくさんお寄せいただきましたので、お客様によるプレゼンテーションの会を再度開催したいと考えております。
今回会場とお料理を提供いただいたのは、取手駅から徒歩1分、art space / bar "conflictable cube"さんです。
美味しい料理とお酒が楽しめるバーの奥と2階にはギャラリースペースがあり、地元や若手の作家の展示会なども開催されています。アーティストやアート好きな方、美味しいお酒の好きな方、お喋りの好きな方。ここに来れば、素敵な人やアートとの出会いが楽しめます。